新潟がれき焼却自治体 地図と場所から見える懸念

新潟県で、東日本大震災で発生した、がれき焼却が進めらている。瓦礫受け入れ自治体の地図と場所を確認すると、新潟県のかなりの範囲を占める。それと同時に、新潟県内全域への風評被害懸念や、風評被害発生時は隣接自治体に補償を行うのかどうかなど、新たな問題が発生しそうだ。

前回に続いて、はまじゃやさん(@hamajaya)、たむごんの連名の記事です。

新潟県内で東日本大震災のがれき焼却に名乗りを上げた5市を塗り分けしてみた。加筆した左上のデータをご覧いただくとわかるように、新潟県全20市6町4村のうちの5市といっても、新潟市、三条市、長岡市、柏崎市、新発田市は、面積にして新潟県全体の約1/4、人口にして県民約6割があてはまる、まさに全県的な問題であることは疑いない。

地図に示した内容を考慮するだけでも、市の権限で強行されて泉田裕彦・新潟県知事が黙っていられるような問題でないことは明らかであろう。

5市による放射性物質のずさん管理や将来的な放射能汚染などの被害を懸念し続けている知事と、瓦礫受け入れを表明した当該自治体の首長らとの対立構図については、新潟県知事と5市長の対立 震災がれき焼却の処理の仕組みが分かりやすいで取り上げた。
新潟県では、瓦礫焼却のためにこっそり移動し強行焼却を行っている事が既に報道されている。

では、5市が瓦礫を焼却することで、どういった被害を引き起こす懸念があるのか、具体的にみていきたい。まず踏まえておきたいのは、泉田知事の一貫した指摘である。

(1)新潟県 泉田知事の指摘

IAEAの基本原則

泉田知事は廃棄物中の放射性物質について、2012年11月15日記者会見で下記の通り指摘している。
IAEAの基本原則で言えば、基本的には放射性物質は集めて濃縮して人間社会から隔離するのです。」 
「希釈して薄め、人間社会に近づけようという処理は、基本原則に真っ向から反しているので異論や何か心配な気持ちが残るということは自然な反応だと思っています。」

300年間の管理を考慮

また、焼却灰の埋め立てについて知事は2012年11月22日記者会見で次のように述べている。
「反対ではなくて、きちんと管理しないと説明できないということです。溶け出す可能性もあるわけですし、300年間どうするのですかと。普通、半減期30年の放射能を管理する選択肢としては、人間社会から隔離して300年間置いておくということです。ナイロンで300年間耐えられるのかというような部分を議論せずに、事実関係を積み重ねるのは如何なものかということを言っているわけです。」

新潟水俣病と公害への懸念

5市は放射能に汚染された震災がれきを、市内の一般ごみに混ぜて焼却し「100Bq/kg以下であり問題なし」と強弁し計画を進行させているが、泉田知事は将来的な公害の懸念も繰り返し表明している。
「新潟水俣病が どうしてあのような悲劇を招いたかと言えば、2度目なのです。元々、有機水銀については問題があるということを熊本県や鹿児島県で認識していたにもかかわらず、濃度規制しか行わなかったのです。濃度規制しか行わないとどうなるかと言えば、水を大量に入れて薄めて川に流せばいいということで、結局は全量を出 してしまったわけです。その結果、有機水銀中毒を引き起こしてしまい、長期の被害を巻き起こしているということになるわけです。」(2012年10月15日記者会見より)
上記の3点が極めて正論であることは疑う余地がなく、この点を踏まえれば、さまざまな実害や風評被害の発生を、がれき受け入れ5市が想定しないこと自体大いに問題であると言わざるを得ない。

(2)新潟県 全域への影響の可能性がある

焼却実施5市で、県人口の6割

がれき焼却5市に近接する近接する自治体…焼却実施5市だけでも県人口の6割をカバーしてしまうわけだが、地図を見るとわかるように、新潟市の北には胎内市が接し、新潟市・新発田市・三条市に囲まれた領域には、阿賀野市、五泉市、田上町、加茂市がある。

周辺自治体にはリスクしかない

ほかにも焼却自治体に囲まれる形で燕市、見附市、出雲崎町などが点在する。三条市、長岡市、柏崎市の南側には、魚沼市、小千谷市、十日町市、上越市が隣接する。

つまりは実害・風評被害ともに、新潟県全域への影響は必至といえよう。5市は被災地そっちのけで廃棄物マネーのうまみがあるのかもしれないが、隣接あるいは囲まれて影響必至の他自治体は、「リスクあるのみ」の状況だ。

(3)焼却した自治体周辺への風評被害の懸念

補償が空手形になる可能性

5市に囲まれた自治体は言うまでもないが、少なくとも隣接する自治体すべてに風評被害の懸念がある。5市は「いざというとき」に国が補償するといっているようだが、国策で進められた原発の過酷事故が起きても、福島の人々にすらまともな補償が行われていないことを考えれば、空手形に過ぎない。

放射性物質を含む廃棄物を燃やす形でのこの広域処理を「受け入れない」選択肢があるにもかかわらず、独裁的に計画を進めるならば、焼却を強行した自治体が保障すべき問題であろう。

新潟県全域に風評被害の懸念

新潟県外の人たちにとって、地理がしっかり頭に入っている場合以外は、がれき焼却の影響が及ぶ範囲はもはや新潟県のひとくくりでしか判断できないかもしれない。自治体が補償しないとも発言している中で、住民たちひいては県民たちは、みずからの安全と生活の維持を、何を以て担保すればいいのだろうか。

(4)懸念される、新潟ブランドへの影響

地図のとおり、本焼却を実施しようとする三条市と長岡市には、魚沼市が隣接している。日本国内のみならず国際的に知られる新潟県農業の旗艦ブランド「魚沼米」の評価に傷がつくことはないのか。

新潟県の農業関係者はじめ、県民全体がこの宝物が面している危機に気づかないとすれば、嘆かわしいという以外にほかない。

(5)水への懸念

新潟米のおいしさの秘訣はひとつではないが、きれいで安全な水の存在は重要な要素だ。泉田知事の指摘通り、大洪水や大地震にビニールシートが300年も耐えて環境や水を守り抜いてくれるなどと考えることができるだろうか。

汚染灰から放射性物質や重金属が漏れ出すようなことになれば、水道を使う県民の健康はいうまでもなく、農業、食品産業への影響も甚大なものとなる可能性がある

(6)廃棄物マネー 

12月22日の中国新聞では、がれき処理せず復興予算340億円 環境省「返還不要」と通達していると報道されている。

瓦礫の焼却により、5市に流れ込む廃棄物マネーは、焼却のための処理費用として計上されているものにとどまらないということだろうか。

焼却せずに被災地にお金も落ち、より安全な処理が可能とも言われる「森の防潮堤」プロジェクトも存在する。しかし、あらゆる反対や多様な意見を無視し、運送業者を使ってがれきとお金を全国にばら撒き「焼却する」という方法にこだわる環境省と自治体の動きは、あまりに理解不能で不透明だ。

新政権において再考が必須とされる問題であろうと考える。

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